クリエイターの極致。丁寧さに目も心も奪われるクレイアニメ
流行り廃りの激しいアニメ業界において、30年以上経ってもキャラクターデザインや古さが全く色褪せないのは、クレイアニメが「リアルな物質」としてこの世界に存在している強みと言えます。上質なサイレント映画を見るようなあの感覚は、まさに大人のクリエイターをも虜にする究極のエンターテインメント。クレイアニメには、不思議な魅力があります。
クレイアニメの成り立ちと歴史
クレイアニメの歴史は古く、映画の誕生(19世紀末)から間もない20世紀初頭には、早くもその原型が登場していました。1912年頃には初の短編が作られ、1933年の映画『キング・コング』の特撮(ストップモーション)の基礎へとつながっていきます。そこから時は流れ、1970年代にウィル・ヴィントンが「クレイメーション」という言葉を商標登録し、ひとつの独立したエンターテインメントジャンルとして認知が広がっていきます。そして、1980年代以降にイギリスのアードマン・アニメーションズ(ウォレスとグルミットなど)やスイスの映像作家オットマー・グットマン(ピングー)の手によって、技術的にも表現的にも黄金期を迎えることに。1秒間(24フレーム)の映像のために、粘土人形を24回、ミリ単位で動かしては撮影する気の遠くなるような手仕事の積み重ねがクレイアニメの本質です。時代を超えて色褪せない、命を吹き込む伝統技法がここにあります。

クレイアニメの3大名作の個性
世界を代表する3大クレイアニメと言えば、「ウォレスとグルミット」「ひつじのショーン」「ピングー」。それぞれにユニークな誕生のドラマがあります。イギリスの至宝「ウォレスとグルミット」は、ニック・パーク監督の学生時代の卒業制作から始まり、その圧倒的クオリティから大ヒットへ。その劇中で毛を刈られた迷子羊として初登場し、爆発的人気からスピンオフとして独立したのが「ひつじのショーン」です。一方、スイスで生まれた「ピングー」は、1987年の映画祭での上映をキッカケに世界中から注文が殺到。発明品が暴走するSFアクション、牧場でのドタバタコメディ、南極の家族の日常と、舞台や作風は三者三様ですが、いずれも粘土の質感とキャラクターの強い個性を活かし、世界中で愛される不朽の名作となっています。言葉に頼らないため、赤ん坊からお年寄りまで、文化や国境を完全に越えて誰もが直感的に笑い、共感することができます。

言葉の壁を越える表現の魅力
クレイアニメ最大の魅力は、言語に頼らない「ノンバーバル(非言語)表現」にあり。「ひつじのショーン」にはセリフが一切なく、「ピングー」も架空の「ピングー語」のイントネーションだけで感情を伝えています。また、「ウォレスとグルミット」の犬のグルミットは、一言も喋らない代わりに眉毛の角度や目の動きだけで、呆れややさしさを見事に演じ分けています。この言葉を必要としない演出のおかげで、文化や言語、年齢の壁を完全に超越して、世界中の誰もが直感的に笑い、共感することができるのです。粘土ならではの伸縮性を活かしたダイナミックな身体の変形と、一流の人形劇としての繊細な演技力…このふたつが融合することで、理屈抜きに大人から子どもまでを虜にできるのでしょう。また、アニメーターの指紋やヘラ跡という「人間の手の痕跡」が画面から温かみとして伝わるからこそ、独自の芸術性を放ち続けています。

CG時代に輝く普遍的な価値と世界的人気
アカデミー賞をはじめ、世界中の映画賞を席巻してきたクレイアニメ。その根強い人気を支えるのは、テクノロジーがどんなに進化しても代替できない「物質としての実在感」と「普遍的なユーモア」にあります。画面の向こうにある人形たちは、実際にこの世界に存在する粘土…そこへ、時代を超えて色褪せない、命を吹き込む伝統技法によって命を与えられています。流行の移り変わりが激しいアニメ業界において、30年以上前の作品が今なお古びて見えないのは、リアルな物質が持つ普遍的な強みがあるから。上質なサイレント映画を観るような贅沢さと、クリエイターの情熱がダイレクトに伝わるクラフトマンシップ。クレイアニメは、効率至上主義の現代だからこそ、より一層の輝きと価値を放ち続けているのかもしれませんね。

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